猫天与

猫天与


「へー・・・こいつこんな由来で名前をつけられてたんだ・・・」


いつも通り昼寝をしていると彼女の声がきこえた。

・・・一人暮らしとはいえ独り言の大きい事だ。

抗議がてら彼女に近づき鳴き声を出す。


「あ!!ごめん起こしちゃった?」


当たり前だ、折角いい気分で昼寝をしていたのに目が覚めてしまった。

彼女は愛読書・・・ジャンプを読んでいる時は本当にやかましい。


「うーん・・・不機嫌そうな顔してるね・・・あ!そうだ!」


何かいい事を思いついたと言わんばかりな様子を見せる

・・・こういう時は大抵碌な事にならない。


「ふっふーん!折角だし※※の名前の由来を教えてあげるよ!」


なぜそうなる・・・一体どこを探せば昼寝の邪魔をしてそのお詫びに名前の由来を聞かせてくる人間がいるのだろうか。

・・・だがまぁ、気にならないといえば嘘にはなるが。


「あっ!ちょっと気になるって顔してるねー!

・・・えーとちょっと待ってね・・・」


そう言って彼女はジャンプのページをパラパラとめくり始める。

・・・おいおいまさか。


「※※!これ見て!!」


俺の予想通りと言わんばかりに彼女はジャンプのページを俺に見せてくる。

・・・そしてこれにはとある漫画の主人公が載っていた。


「これは私が一番推してる漫画の主人公なんだよ!※※の名前は彼からとったんだよ!」


・・・まぁ予想はしていたが、マジで漫画のキャラから取ったのか・・・


「彼はね・・・好きな人を守る為にどんどん強くなっていくんだ!だからその名前はお守り!・・・※※も好きな子ができた時にその名前は力をくれるはずだよ!」


そう言って満足気に彼女は微笑む、・・・好きな子か。


俺の好きな人、それは決まっている・・・


彼女だ


彼女の笑顔を見る度にこっちも笑顔になる


彼女が漫画で泣く時はこっちも少し悲しくなる。


彼女を見る度に俺の心は温まる


この感情を


きっと恋というのだろう。


だがその感情が彼女に伝わる事は決してない、


この姿である限り


喉から出る声が鳴き声である限り



「だから好きな人を守れるような強い子になってね!













ヨウ!」










・・・はぁ、全く彼女は


その言葉を聞くと俺はまた眠りについた・・・

















「・・・寝ていたのか」

懐かしい夢を見た

俺の名前・・・ヨウが名付けられた理由の夢だった。

このタイミングでこの夢を見るとは・・・偶然だろうか。


俺は彼女の墓へ行きある誓いをしようとしていた。














・・・ヨウ、この名前は今ここで置いていく。












俺は彼女を守れなかった。


俺は彼女を拒絶した。


・・・そして今から俺がやろうとしている事は守る為の戦いじゃない。


殺す為の戦いだ。


だからこの名前はここで捨てる。


俺はもうこの名前に相応しい人間じゃない。


今ここにいるのは・・・殺す為に力を磨く獣だ。



・・・そうなると代わりの名前を考えなくてはならない。





・・・そうだな、ハンドルネームと併用する事にしてこうしよう



天与呪縛によって猫に成り果てた


かつて人であった獣






・・・猫天与と


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